岩手医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科

頭頸部外科講座案内

主任教授 ご挨拶MASSAGE

志賀 清人

私は2011年7月に盛岡にやってきました。私はこれまで頭頸部外科、頭頸部腫瘍専門に研究・診療・教育を行ってきました。先日も北東北3県、青森、秋田、岩手が男性の死亡率ワーストナンバー3という報道がありました。癌ばかりではないと思いますが、今後も岩手医科大学の診療圏ばかりではなく、北東北全体の頭頸部癌治療の底上げを図って行きたいと考えております。

「頭頸部」と呼ばれる領域は、耳・鼻腔・副鼻腔・口腔・咽頭・喉頭・頸部食道・頸部といった広範囲な部位を含んでおり、この部位の主に外科治療を担当するのが「頭頸部外科」です。炎症や外傷などもありますが、頭頸部外科の扱う疾患の多くは、これらの部位から発生する頭頸部腫瘍(頭頸部癌)になります。頭頸部は咀嚼・嚥下・呼吸・発声・構音という人間の生命維持にとって非常に重要かつ必須の機能を持っており、また聴覚・嗅覚・味覚などの重要かつ多岐にわたる機能を担っています。そのため、その治療にあたっては、これらの機能の温存、治療後の患者様のQOL(quality of life 生活の質)を十分に考慮する必要があります。頭頸部癌は手術治療が中心ですが、臓器・機能の温存のために化学療法や放射線治療を組み合わせて集学的な治療を進めて行きます。

これまでの我々の治療実績から上顎癌では超選択的動注化学療法が、聴器癌では化学放射線治療が有効であるというエビデンスを得ています。また、口腔癌では手術治療が第一選択であり、下咽頭癌では喉頭温存を図る化学放射線治療や下咽頭部分切除を行い、進行癌でも手術と化学放射線治療を組み合わせることで治療成績が向上しています。中咽頭癌ではヒトパピローマウイルスの関与が認められる症例が増加しているというエビデンスを基に、臓器温存を図る方向で治療を進めています。進行癌の手術で欠損部が大きくなる場合は、術後の機能の改善を目的に形成外科・外科と合同で再建手術を行っています。また、逆に中下咽頭の表在癌などでは消化器内科と協同で内視鏡手術を行っています。

頭頸部癌は喫煙・飲酒というリスク・ファクターがあり、特にタバコは喉頭癌、アルコールは中・下咽頭癌と関連が深いとされています。アルコール発癌については上気道・上部消化管の発癌に関する研究班に所属し、現在コホート研究が進行中です。今後市民講座やこのホームページなどを利用して、頭頸部癌の診断や治療、喫煙・飲酒のリスクなどについて情報を公開していく予定です。

当講座についてABOUT

講座の基本理念

耳鼻咽喉科学講座は聴覚、平衡覚、嗅覚、味覚など人間のもつ基本的な感覚の中でも極めて重要な分野を受けもち、また同時に音声・言語機能、呼吸機能、嚥下機能などの広範囲な領域を含む学問であります。このような生活の質に大きく影響する領域の機能障害の原因を追求し、診断、予防、治療に貢献する診療と研究を行うことを教室の基本理念としております。

講座沿革

1929年10月 金野 巌先生が初代教授として開講
1951年 母体組織である岩手医科大学は学校法人として組織変更
1954年 第55回日本耳鼻咽喉科学会総会で宿題報告である「髄膜・髄液の問題」を金野 巌教授が報告
1958年10月 檜學先生が教授に就任
1959年 第60回日本耳鼻咽喉科学会総会で宿題報告「メニエール氏症候群をめぐる諸問題 2)前庭機能検査と治療」を報告
1966年3月 立木孝先生が教授に就任
1974年10月 第19回日本オージオロジー学会を主催
1975年9月 第20回日本音声言語医学会を主催
1976年 日本耳鼻咽喉科学会の宿題報告「感音難聴 特にその成因」を報告
1978年9月 第6回日本臨床耳科学会を主催
1992年8-9月 21st International Congress of Audiologyyを主催
1996年4月 村井和夫先生が教授に就任
1996年5月 第6回日韓耳鼻咽喉科頭頸部外科学会を主催
2001年10月 第46回日本聴覚医学会を主催

2003年4月

佐藤宏昭先生が主任教授に就任

2021年5月

第122回日本耳鼻咽喉科学会総会宿題報告「急性感音難聴診療の新展開」を報告

2022年4月

志賀清人先生が主任教授に就任

 

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